| 国際環境研究協会ニュース 2012年1月1日号(第187号) 新年号 |
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合志 陽一((社)国際環境研究協会 会長)
明けましておめでとうございます。今年は例年と異なり、やや重苦しい言葉となるのは残念でありますがお許しください。 2011.3.11の東日本大震災とそれに伴う原発事故は、全国民に大変深刻な問題をなげかけています。今回の原発事故で強調されたのは、1000年に一回程度の大津波によるもので想定外の事態であったという点であります。想定外という言葉の意味する範囲がどういうことかはっきりしませんが、“考えないことにする”ということであれば、その判断の妥当性について厳しく問わなければならないでしょう。 さて、1000年に一度との数値はともかく、学会レベルでは貞観地震の例もあり、予想される事態が過小ではないかとの議論が度々ありました。残念に思うのは、もしかするとあり得る大震災・大津波への議論がされながら、それが活かされたように見えない点です。一度決定された耐震基準やその他の変更は、よほどの事情の変更がなければなかなか行われないのが日本での行政上の一般的な慣習です。この行政の硬直性はまことに強固で、時には多くの問題を引き起こしているように思います。勿論、行政の方針は簡単には揺らいではならないですし、社会一般の事象は大部分そのように扱ってよいと思います。問題は未知のもの、変化・発展の激しいものの場合です。例えば原発の許認可などはそれにあたります。 科学技術の進歩や社会情勢の変化などは、過去に行われた判断の前提を変えることが多いものです。地震発生の新しいメカニズムや断層の発見などは前者であろうし、国家崩壊による規制主体の喪失などは後者にあたるでしょう。考えてみると、決して稀な事態ではありません。問題は、このような変化に如何に適切に対応していくかということです。 原子力関係では、このような事態での対処をバックフィットと呼び、重要な概念です。未知・不確定な要素を含むときには、あらゆる決定は事後にバックフィットで新しい事態に適合させていく必要があります。そのうえで、新しい決定を十分厳密にするのが望ましいわけです。これは様々の決定を遅延させたり、コンサーバティブにすることではなく、むしろ決定を早め、誤りを早期に除去することに役立ちます。多くの環境問題でも、未知・不確実さを含む場合、この対処の仕方は有効と思われます(ECの ”Late Lessons ” 参考)。 以上は法・規制のレベルでの問題ですが、原発問題で議論されている他の面も忘れてはなりません。それは、問題点の指摘や異議の提起を尊重する気運の醸成です。多種多様な意見が出て混乱を極める時期もあるでしょうが、不適切なものは十分検討の上に除けば良いのです。率は低くとも重要なものを見落とすことがないようにするのが、未知・不確定な要素が多い事象を扱う時の忘れてはならないポイントです。なお、このような高度の作業を担える使命感に満ちた有能な人材を確保も、極めて重要であることを付け加えておきたいと思います。 今回の大震災・原発事故をめぐる感想を述べましたが、まとめてみると、日本の科学技術の中に弱い部分があり、未知未経験の分野で、それが表れているといえるでしょう。 原発のみならず、環境問題全般を含めて未知の部分の多い問題に如何に対処するか、我々は大きな課題を負っていることを改めて認識し、その解決に共に力を尽くそうではありませんか。 |
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高木 宏明(理事)
新年明けましておめでとうございます。年末から寒い日が続きましたが、いかが過ごされたでしょうか。 昨年は、3月に未曽有の被害をもたらした東日本大震災やそれに起因する福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染、7月から10月にかけてのタイなどのインドシナ諸国での大洪水、9月の紀伊半島での記録的な大雨、10月にはトルコでの大地震と大きな災害が続きました。東日本大震災があったせいでしょうか、災害の年という感じがしました。 経済の面でも東日本大震災やタイの洪水などで日本経済は大きな打撃を受けましたし、ギリシアに端を発した欧州の財政危機は世界経済を震憾させて、停滞の年という感じがしました。 一方、政治の面では、チュニジア、リビア、エジプトなどの北アフリカの国々で長期独裁政権が倒れ、人々の自由が回復されて、多くの人々の笑顔を見ることができました。 また、スポーツでは、なでしこジャパンが女子サッカーワールドカップで劇的な優勝を遂げました。決勝のPK戦直前のミーティングで監督をはじめ選手が皆笑顔を見せていたのが印象的でした。さらに、フィギアスケート日本選手権で直前に最愛の母親を亡くしたにもかかわらず浅田真央選手が逆転優勝を果たしました。昨年の年末を彼女の笑顔で締めくくることができたのはよかったなと思います。 今年は、東日本大震災の被災地の復興や原発の事故で汚染された地域の除染というとてつもなく大きな課題がのしかかっていますが、東北や日本はもちろん、世界各地で多くの笑顔を見ることのできる明るい年になってほしいものです。 さて、昨年12月に南アフリカ共和国のダーバンで、気候変動枠組み条約/京都議定書の締約国会議が開催されました。将来の枠組みをめぐって交渉は大変難航しましたが、将来の枠組みに関しては、法的文書を作成するための「特別作業部会」を立ち上げ、遅くとも2015年中に作業を終えて、2020年から発効させ、実施に移すという道筋が合意されました。また、京都議定書の第二約束期間については、我が国を含めたいくつかの国は参加しないものの、第二約束期間に参加する先進国の削減目標と期間について、次回の締約国会議で決定することとなりました。我が国の思惑どおりの結果になりましたが、京都議定書を離脱しないものの、自主的な削減目標を掲げて対策を進めるとした場合に、少なくとも2015年まで温暖化対策のモーメンタムをどう維持していくか、なかなか大変な問題を抱えたように思います。 1月からは、本格的な除染作業が始まります。中間貯蔵施設の立地候補地も細野環境大臣から福島県知事に正式に伝えられて、福島県の判断を待つ状況にあります。除染のための基本方針、各種ガイドライン、最初の除染地域など大枠は出来上がってきていますが、除染の実務は、過去の経験もないし、そう生易しいものではないと思いますので、まだまだ課題は山積であろうと想像します。長い道のりですが、がんばっていただきたいと思います。 さて、協会の業務ですが、「平成24年度環境研究総合推進費」については、委員による書面評価が終わり、ヒアリングの対象となる課題が選定されました。1月中旬から2月中旬にかけて、7つの分科会でヒアリングと選考が行われます。 「地球温暖化対策技術開発・実証研究事業」については、1月19日(木)に椿山荘で成果発表会が行われます。詳しくは後述の関連記事をご覧下さい。それに合わせて、「地球温暖化対策技術開発・実証研究事業」の和文パンフレットが出来上がります。また、「平成24年度地球温暖化対策技術開発・実証研究事業」については、昨年12月22日に実施方針が公表されています。この事業の公募自体は、1月中旬から開始されます。 引き続き、みなさまのご指導・ご支援のほど、よろしくお願いいたします。 |
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環境省では、エネルギー起源二酸化炭素排出量の削減を目指した対策技術の開発・実証及び普及を推進するために、広く民間企業、公的研究機関、大学等から提案を募集し、優れた技術開発等を促進する「地球温暖化対策技術開発等事業(競争的資金)」を実施しています。 この度、下記要領で平成22年度に終了した事業の成果を、専門家だけではなく広く市民・国民の皆様に知って頂くために、「平成23年度地球温暖化対策技術開発成果発表会」が開催されます。 参加を希望される方は、電子メールで、[1]氏名、[2]勤務先、[3]電話番号、[4] E-mailアドレス を平成24年1月12日(木)12:00必着で、ontai@airies.or.jpまでE-mailにてお申し込み下さい。お申し込みの際は、E-mailのタイトルに「地球温暖化対策技術開発成果発表会参加希望」と明記して下さい。 なお、希望者が定員(120人)を超えた場合には、受付を締め切ることがありますので、お早めにお申し込み下さい。 連絡先:地球温暖化対策技術開発成果発表会事務局(当協会)
満員盛況だった昨年の会場の様子(H23年1月13日) ●日時:平成24年1月19日(木)15:30~18:00(開場14:45) ●場所:椿山荘 9階「アザレア」(文京区関口2-10-8) ●発表内容(予定) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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昨年12月、英文誌Global Environmental ResearchVol.15No.1“Biomass Burning and Its Impacts on Earth’s Environment”を刊行致しました。 東京大学大気海洋研究所 特任教員である 鶴田治雄氏に企画をしていただき、また査読者の選定、最終原稿の確認などについては、当協会プログラムオフィサー福山研二が担当しました。北はシベリアから南はアフリカまでのさまざまなBiomass燃焼について取り上げています。是非ご高覧ください。 なお、以下に2012年刊行予定の特集号をご紹介いたします。 <英文誌> <和文誌>
本年も『地球環境』、“Global Environmental Research” ともによろしくお願い申し上げます。
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原口 紘炁(プログラムオフィサー) 第3研究分科会:「リスク管理・環境リスク」分野
◎C-1152:戸外活動時間を考慮に入れた、土壌性ダスト(黄砂)による呼吸器/アレルギー疾患リスクの定量的評価
喘息等のアレルギー疾患に苦しむ小児が増えている。砂漠化に伴い黄砂が日本で観測される頻度も1980年代後半から増えている。黄砂の飛来は小児喘息入院の危険因子となることが示されているが、既存の喘息を短期的に悪化させるだけでなく、喘息の発症にも関与し長期的な影響を及ぼしていることも疑われる。
◎C-1153:母親と新生児を対象とする化学物質曝露のリスクと魚介類摂取のベネフィットの比較研究
魚介類摂取を介して、難分解性有機汚染物質(POPs)やメチル水銀といった化学物質への曝露が懸念されるが、魚介類摂取でω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)といった栄養素を摂取できるベネフィットも期待される。妊娠女性の魚摂取のリスクとベネフィットの比較を目指し、3年間で3,500名程度の妊娠女性を対象に、妊娠女性より母体血、臍帯血および母乳の提供を受け、脂肪酸分析を行うとともに、健康指標として、産科学的調査、胎児胎盤機能評価、胎児の成長、新生児の身体的な成長と神経行動学的な発達の追跡を実施する。
◎C-1154:黄砂のヒト健康への影響に対する臨床および基礎研究の融合アプローチ
黄砂の健康被害について懸念が高まっているが本邦での調査は少なく、諸外国の報告をみても見解は定まっていない。我々は2007年から黄砂の健康影響を調査し喘息患者で強い影響を受けることを発表してきた。
◎C-1155:黄砂エアロゾル及び付着微生物・化学物質の生体影響とそのメカニズム解明に関する研究
中国内陸部やモンゴルから発生する大規模黄砂は交通機関や精密機器等の産業、牧畜、農業生産へ被害をもたらす他、中国由来の大気汚染物質が加わった汚れた黄砂による健康被害も報告され、現在、黄砂は東アジア一帯の国境をまたぐ環境問題となっている。我が国では黄砂現象時にアレルギー疾患である花粉症や小児喘息等に影響が認められることが学術論文に報告され、行政的な対応が迫られている。このような社会的・行政的背景がある黄砂の健康問題の解明には、これ迄の黄砂研究の先端的知見や技術を有する研究機関が連携して多角的に・迅速に取り組む必要性がある。
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* 環境推進費:環境研究総合推進費 ![]() |